骨延長術(脚長差、身長手術、身長を伸ばす手術)の合併症に関する四つ目の深層分析の主題、「不癒合」です。

骨が十分な期間が過ぎたにも関わらずくっつかないことを、不癒合(nonunion)と言いますが、くっついたにはくっついたけれども少し遅くくっつく場合を自然癒合(delayed union)と言います。これは身長手術のような骨延長手術のみならず骨が折れる骨折においても同じ概念として使用します。

どうすれば不癒合、自然癒合を防ぐことができるのでしょう?とは合併症を防ぐための、「生存」に関わる悩みであります。同じような概念ですが、どうすればもっと早く骨をくっつけることができるのか?すなわち、一般的な速度よりももっと速く仮骨を形成させることができるのかは、早期のリハビリ、早期の社会復帰のための「well being」な概念になりえるからです。

しかしながら、二つの悩みは結局同じ主題、骨をよりもっと上手く形成させるためのものです。

1.医師の要因(surgeon factor

2.患者さんの要因(patient factor

最も重要な医師の要因とは、仮骨形成を上手くさせるための知識と手術的なテクニックを実行したのかどうかに関わる問題です。このためには正しい骨切り位置、骨切り方法、組織損傷の最小化などの深い知識と多くの経験また精巧な手術の腕が必要になります。

患者さんの要因とは…仮骨形成を妨害することになる条件をもつ方たちがおられます。例を挙げると、糖尿病やリュウマチ関節炎などの消耗性全身疾患の場合には、仮骨形成がうまくいきません。煙草を吸う方もやはり仮骨形成に妨害になります。

私がいつも強調するように、治療期間の間に禁煙する自信のない方たちは、骨延長術(脚長差、身長手術、身長を伸ばす手術)を受けられてはいけません。煙草が仮骨形成を妨げるということは明白に明らかになっている事実です。

 

骨延長術(脚長差、身長手術、身長を伸ばす手術)を行う方たちは、大部分は健康な方たちですのでこのような患者さん要因からは比較的に自由だと言えると思います。

医師たちが身長手術の後に仮骨形成がうまく出てこない場合に無条件に患者さんのせいにする傾向があるのですが、その前に自身の方法に問題がないのか振り返らなければなりません。

下記は別の病院において手術をした後に、不癒合が生じて私の診療を訪れた患者さんの中のお一人です。手術後に二年にもなるのに骨がほとんど形成されていません。この方は私が手術をして骨をくっつけて差し上げました。

不癒合,仮骨形成,李東訓(イドンフン)教授,身長を伸ばす手術-1

ある症例では、骨が出てこないまま長い間に歩くことによって内固定(金属釘)が折れてしまった患者さんの方もいらっしゃいました。医師としては何とも言えない…ケースです。このようなことは起きてはならないことです。

もちろんどんなに手術が成功だったとしても骨が遅く出てくる方もいらっしゃいます(自然癒合)。しかしこれまで私が身長手術を行った多くの方たちの中で不癒合が一例もなかったというのは…健康な患者さんにとって「患者さんの要因」は自然要因に対する原因にはなりえるとしても不癒合の要因にはなりえないというのが、私の考えです。つまりは、健康な方が不癒合が起きてしまうような手術をしてはならないということです。

 

それでは、骨延長術(脚長差、身長手術、身長を伸ばす手術)を受ける方たちにとって気をつけるべきことを整理しましょう。

1.最も重要なことは「禁煙」です。

.食事:治療期間の間にあれこれと健康補助食品を摂取される方たちも多いです。さらには数年前に入院された方たちが全く同じブランドの健康食品をもって来られたので調べてみると、手術をなさったある方がそのブランドの食品を摂取して仮骨形成がよく出たという噂が出回っていたのでした。強いてそういったものを買って摂取する必要はありません。治療の過程できちんと食事を召し上がることが最も良い事です。十分なたんぱく質の供給も重要ですね。

3.体重負荷:体重の負荷は重要です。これは特にイリザロフを着用している時に効果的です。イリザロフは体重を負荷した際に軸の方向に若干の動きを許容しますがこういった微細な動きが仮骨形成を促進することに役立ちます。ある患者さんは一日中座ってコンピュータだけなさる方もいらっしゃいますが…これはよくありません。

4.日光:仮骨を形成させるために重要なビタミンDは日光に当たらないと形成されません。治療の過程において一日に30分ずつ日光に当たると役に立ちます。どこに日光を当てても構いません。背中、脚、腕どこでも構いません。

 

手術を行う医師としての仮骨形成をよく出るようにする技術的な方法に関しては、ここでは省略することにします。

私が病院の専攻医の先生たちにはこんな話しをします。「皆さんは学問的には学ぶ立場としての過程が重要です。けれども患者さんたちを治療するに当たってはプロでなければなりません。プロとは結果で語らなければなりません。」投手は防御率が良くなければならずストライカーはゴールを多く入れれば、良い選手です。同じように、医師は治療の結果が良くなければなりません。

プロの世界では、「最善を尽くしました」という言葉よりも「何の言葉もなくとも結果が良ければいい」というのが私の考えです。

今回の主題を書こうと以前の資料を見ると、この間に仮骨形成に関する講義を本当に多くしてきましたね。

下記は中国での骨延長変形学会の十周年記念学会にて招待を受けて行った骨形成促進に関する講義です。

骨形成促進,中国骨延長変形学会,李東訓教授,身長を伸ばす手術-2

下記の論文は仮骨形成を促進するための一つの方法として私が考えだした骨髄細胞濃縮法に関する論文です。この方法は私が世界で初めて発表をして、その効果を立証して世界的な学会誌であるCORRに掲載されました。

骨髄細胞濃縮法,CORR,Dong Hoon Lee,李東訓教授,身長を伸ばす手術-3

そして下記は米国の教科書にも仮骨をよく形成させる方法に関する章を私が共同で著述しました。

Pediatric Lower Limb Deformities,米国教科書,李東訓教授,身長手術4

私は現在までに数多くの骨延長術(脚長差、身長手術、身長を伸ばす手術)を行ってきたにも拘らず、不癒合の症例はただの一例もありませんでした。その結果にはそれだけの理由があります。