日本の方で、身長を伸ばす手術をなされた方の体験記です。

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子供の頃から低身長に悩み、身長手術に興味がありました。

昔、イリザロフ骨延長手術をテレビで見ましたが、1年間車椅子生活で、苦痛も大変なものと紹介されていたので、断念していました。

 

その後、医療技術が進歩し、より短期間で回復することができ、治療中の不便さも緩和されていることを知りました。

 

最新の技術を使った内固定式延長の機器、PRECICEを使った手術を受けたいと思うようになりました。

 

日本では使用されていないので、外国の医師を捜しました。

米国、欧州、インドなど、インターネットで情報を比較し、韓国のLee先生に決めました。

価格や実績を比較して検討しましたが、症例のレントゲン写真を比較すると、Lee先生の手術が一番きれいでした。ネットの掲示板では、第一人者の米国や欧州の医師が絶賛され、インドの医師も低コストで欧米と同じ治療ができると、コストの優位性が語られていましたが、精密さにこだわる日本人の目から見ると、少しずれていたり、まっすぐに固定されているようには見えない症例も多々ありました。切開創も大きく、審美的にも納得できるものではありませんでした。

一方、Lee先生の症例は、骨切り部分から上下の骨がまっすぐに固定され、美しい仕上がりで、切開創も最小限の大きさで大変きれいでした。

 

先生のホームページの掲示板で連絡を取ると、すぐにお返事をいただきました。

その後、コンサルテーションを受けに韓国に行きました。下肢や全身の詳細なレントゲン写真を撮り、全体のバランスから大腿骨・脛骨それぞれどの程度の延長が可能か調べていただきました。その結果を踏まえて、上下合計で9㎝の延長を計画しました。

 

まず、PRECICEで大腿骨の延長をしました。

3か月入院するパッケージでしたので、不安はありませんでした。

手術は問題なく終わり、術後鎮痛薬の静脈投与のおかげで、痛みも耐えられる程度でした。しかし、その薬が終わり、経口薬に切り替わると激しい痛みに苦しみました。初めの1週間は動くこともままならない状態でした。

その後、リハビリが始まりました。曲げることができなくなっていた膝の可動域を増やすため、理学療法士から施術を受けました。理学療法士とのリハビリ時間は1時間だったので、それ以外は自分でリハビリをするように指導を受けました。

延長は一日3回行いました。延長自体は痛くありませんが、筋肉が延ばされ痛くなるので自分で一日中ストレッチをしていました。就寝中はストレッチができないので、筋肉が縮まってきつくなるのか、23時間毎に痛みで目が覚めました。そのたびにストレッチをして大腿四頭筋を伸ばし、痛みが緩和すると眠りに落ちるという毎日でした。

 

毎週レントゲン写真を撮り、延長がきちんとされているか、骨形成は進んでいるか、遅れているか、進みすぎていないか、先生が確認してくださいました。骨形成が早い人は延長を早くするように、遅い人は延長を遅くするように指導を受けましたが、私は一定の延長で続けることができました。目標であった、4.5㎝で延長を終了しました。

 

その後、回復し、普通の生活に戻りました。4.5㎝でも以前の身長に比べれば大きな差に感じ、標準身長の範囲の下限に近づいたことで生活の中で低身長を感じることは減りました。しかし、大腿骨が長くなったことで、アンバランスで膝下の短さが不自然になり、見るたびに骨延長をしたということを思い起こさせられました。

 

もし満足であれば、大腿骨の延長だけで終わりにすることも考えていましたが、やはり、脛骨の延長も行うことにしました。

 

PRECICEは荷重をすることができなかったので、しっかりと骨形成されるまでは車椅子生活でした。創外固定器を付ける必要がないため、邪魔なものがないという点では便利でしたが、車椅子では身の回りのことをするのに不便で、立って歩けないことに苦労しました。

 

そのことから、脛骨にはLONを選びました。

 

手術直後は、それ程痛みはありませんでした。ハイキングで一日中歩き回って次の日に脛がものすごくだるくなった時と同じような感じでした。ただ、創外固定器が装着されていますので、その違和感がありました。足をベッドにつけることができずに、ピン数点で固定されているだけなので、そこに負荷がかかっている状態で、いいポジションがなかなか見つかりませんでした。延長自体は、痛くありませんが、ピン刺入部を消毒されたときに激痛が走りました。創が閉じてくれば、消毒も痛くなくなりました。

LONは体重を荷重することができる点では楽でしたが、膝関節の側のピン刺入部が感染すると痛かったです。頻繁に感染しましたが、抗生剤を飲んで治しました。

LONでは、尖足になるのを防ぐため、創外固定器にベルトを固定するサンダルを履いていました。寝る時に不快で、緩めた時もありましたが、尖足が進むので、緩くしない方がいいと思います。歩行器を使って少し歩くこともできましたが、主に車椅子を使っていました。

23週間毎に病院に通い、延長量と骨形成状態を管理していただきました。

 

4.5㎝で延長を終了し、創外固定器を外して髄内釘を固定しました。

PRECICEと違い強度があるので、すぐに荷重が可能でしたが、膝の方のネジに全体重の荷重がかかり痛いので、立ったり歩いたりすることは初め大変でした。負荷をかけないと骨形成も進まないので、立つように心がけました。

落ちていた筋肉も増えて、痛みも和らいでくると、足関節の可動域が90°しかなく、かかとがやっと床についているだけで、後ろに倒れそうな感じがすることが気になりました。アキレス腱のストレッチを念入りに行いましたが、かなり硬くなかなか伸びませんでした。骨が固まってくると力も入れやすくなったので、思いっきり体重をかけて伸ばしました。一気に伸ばすことができて、数回で大分楽になりました。

 

上下同じ長さを延長した後は、自然な比率になったので、違和感は全くありません。9㎝延長したにも関わらず全く気にならず、手術をしたことも普段は忘れています。

 

今では標準身長の範囲下限に入っているので、街で身長を意識することはありません。まだ、低い方ですが、普通にいる程度ですし、もう気になりません。私より身長の低い人もいますが、だからどうとも思わず、高い人をうらやましいとも思わなくなりました。

 

この手術は一時的には大きな痛みも伴い、長期間生活が不便になり、非健常者としての暮らしを経験します。これまで、若くて健康で、元気で不自由なく、当たり前のように強者として生きてきた人間が、苦痛と不自由をかかえ、車椅子生活を送り、弱者として人の世話になり助けを必要とする生活を経験できたことは、よかったと思います。社会には、健康でない人、弱っている人も少なくありません。そういう方々の立場、苦労や気持ちもわかるようになりました。自分たちもあっという間に年を取り、どこか体の調子が悪くなるのですから、同じです。他人ごとではありません。健康で元気に過ごしてきたために、これまでの自分が無意識とはいえ傲慢になっていたことがわかりました。思いがけず、いい経験ができたと思います。