骨延長術(身延延長術、四肢延長術、distraction osteogenesis、leg lengthening)の歴史についてお話しします。
骨の長さを伸ばす手術に関しては、イタリアのDr.Codvilla(1861-1912)先生が、
Am. J of Orthopedic Surgeryというジャーナルに初めて論文を発表しました。もちろんこの論文は現在の骨延長術とは遠い概念ですが、この時代にそのような考えをもっていたことはすごいことです。
Codvilla先生の肖像画
Codvilla先生が働いていた病院に展示されている彼の所蔵品
本格的な骨延長術の始まりは、ロシアのDr. Ilizarov(1921-1992)先生のお陰です。イリザロフ先生は「骨延長術の父」と言うことができます。「イリザロフ(創外固定器)」は、イリザロフ先生が作られた手術器具を総称する言葉でもありますが、普通は「イリザロフ」というと一般の方たちは危険な手術だ程度に認識していることが現実です。しかしながら、イリザロフ先生の革命的な開発がなかったとしたら、今日の整形外科はないと言っても過言ではありません。
イリザロフ先生
イリザロフ先生は器具の開発だけではなく骨延長術という概念を科学的に定立させた方です。
Carlo Mauri(1930-1982)
イリザロフという器具は、当時に西洋では治療するのが難しかった骨延長、骨髄炎の治療などを解決することができる画期的な手術法でした。
けれども、イリザロフ外固定器具を利用して延長をしていくと不便な部分が本当に多かったのです。
つまりは骨を延長して骨が硬くなる期間の間全て、外固定を着用していなければならないため、外固定のピンによる合併症(痛み、関節拘縮、深刻な手術痕、ピンの感染など)も多く発生して精神的なストレスも相当なものでした。
そのため医師たちはこのすばらしい概念の治療法を行う上で、どうすればイリザロフ創外固定器の装着期間を短くできるのか悩み始めました。
結局は1990年代半ばに、私を指導して下さったペイリー先生がLON(Lenghtening Over Nail)手術法という方法を定立させることになりました。この手術方法は「延長」する期間の間だけイリザロフ創外固定器を着用し、延長が完了した後に骨が「硬くなっていく」期間には外固定をなしに内固定によって維持をするという概念です。韓国ではこの手術法が一般人の方たちには「速成延長」と知られていますが、この名称は整形外科において使用する用語ではなく、インターネット用語です。骨がもっと早く硬くなるのではなく、外固定装置をもっと早くに外せるという意味です。
私が、Dr. Paleyのfellowとして勤務していた当時
LON(速成延長)手術法の過程
その後に私は、LON手術法の二つの短所である、仮骨形成(callus formation)とX脚傾向の現象(valgus change)に関して解決方法を証明することになります。
以後に、LON手術法とは別の方式によって外固定を早期に取り外す方法が出てきます。ニューヨークのロズブル先生(Dr. Rozbruch)が、Lengthening And Then Nailing(LATN)という方式を定立させました。LATN手術法とはLON手術法よりも技術的に非常にむずかしい手術なのですが、これが有用な場合が多くあります。LATN手術法は韓国では私が国内で初めて成功させた手術であり、手術名を「レイトン」と命名しましてLATN手術法を利用した手術件数も世界的に1位2位を争っていると思います。
レイトン(LATN)方式を利用した骨延長術(李東訓教授による手術)
LATN手術法は深刻な奇形や複雑変形において延長をするのが有用です。(李東訓教授による手術)
このような全ての方式は骨延長の過程において外固定装置を早期に取り外すための努力の結果でした。
けれどもこのような手術法も延長する期間の間はイリザロフ創外固定器を着用しなければならなかったですし、そのために医師たちは外固定を全く使用せずに延長することはできないのかと悩み始めました。
そこで開発されたものが、内固定を利用した延長器具(lengthening nail)です。
―第2編につづく。